夫婦二人の事業は事業専従者控除or配偶者控除?社会保険料がこんなに違う!

管理人は夫婦二人で小さな個人事業を営んで、慎ましいながらも自由に生活をしている身なのだが、事業スタート当時には国民健康保険料の高さにぶったまげて意気消沈していた。

今回は、所得税が発生しない程度の所得の時にどうやって社会保険関係を最適化するかに焦点をあててみる。その方法をシェアしたい。ニッチな情報だが必ず役立つ人はいるはず。
弱者だからこその戦い方があるのだ!

あくまでもこの方法は夫婦二人や、家族と少人数での事業(今回は夫婦で説明)、なんらかの事情で収入が少ない場合に試してほしいアプローチだ。

さて、所得が少なくて課税所得が0円以下なら国税はもちろん払わなくていい。ただし社会保険はそうは問屋が卸さない。

まったく収入がなくても国民健康保険は0円にはならないし、スズメの涙ほどの所得でもそれなりに取られる。年金も免除制度があるとはいえ全額免除を得るためには収入はかなり低くないと無理だ。

そこで、今回紹介する方法は、このように申告すれば場合にによっては国民健康保険などが安くなるかもしれない方法だ。特に所得が少ない時には有効なので是非ご自分で計算してみて欲しい。

 

夫婦二人での事業。配偶者控除?それとも白色事業専従者控除(または青色事業専従者給与)

今回は白色事業専従者控除を使った例だが、青色事業専従者給与でもほとんど考え方は一緒だ

一年頑張って稼いだ額を仮に100万円とする。売り上げから経費を引いた額が100万円。
夫婦二人で働いた結果だ。

この場合の夫婦それぞれの所得を考える。

  • パターンA 本人100万円、妻0(妻を専業主婦にして100万円はあくまで本人の所得にする)
  • パターンB    本人50万円    妻0(妻に給料という形で半分の50万円支払う形。50万円が最大)

パターンAは妻は仕事をしない専業主婦扱い。だから本人申告で配偶者控除が使える。Bは妻が本人の仕事を手伝って本人から給料を50万円貰っていると考える。(この場合全体所得が100万円なので給料は50万円が最大。計算は下記国税庁リンクで)

参考ページ 国税庁 青色事業専従者給与と事業専従者控除

このBのやり方を白色事業専従者控除という(青色申告している人は青色事業専従者給与とに読み換えてOK)

尚、パターンBの場合は妻がもらう50万円は給与収入だが、給与所得は0円になる。給与所得控除55万をマイナスできるからだ各種社会保険の計算では、妻の所得はこの0円が算定基礎になる。

白色事業専従者控除(または青色事業専従者給与)で受け取る側は給与収入となるため給与所得控除を受けることができる!

今回の記事は、上記A,Bどちらを採用するかによって収める税金、社会保険が変わってくるという話だ。

言い換えれば上記AとB、どっちが得か?という話になる。
これを徹底的に比較するのだ。

そして比較する時には、国税(所得税)、国民健康保険、年金、住民税などを総合的に検討する事が必要だ。

具体的に見ていこう。

【前提条件】※この数字は読者各々の数字を入れてみてほしい。

本人と妻で事業を営む
他に収入なし
事業所得100万円(収入から経費をひいたもの)
控除は基礎控除48万円とその他の控除合計が例として20万円(社会保険控除など)で合計68万円とする

確定申告書B

※事業所得は他に所得がなければ画像の囲み部分⑫に合計がくる。今回の例はここがパターンAでは100万円、パターンBでは50万円だった場合(ここの数字は事業専従者控除が考慮された額が入る)

もう一度それぞれの所得を整理する。上記前提条件の場合の所得は下記のとおり。

パターンA(配偶者控除)の場合のそれぞれの所得
本人所得 100万円
妻所得 0円
パターンB(白色事業専従者控除)の場合のそれぞれの所得
本人所得 50万円
妻所得 0円

ここで一つ覚えておこう。パターンBで白色事業専従者控除や青色事業専従者給与で申告する場合は、給料をもらう側(妻)は控除対象配偶者や扶養親族にはなれない。これは配偶者控除は受けられないことを意味する。どちらか一方しか選べないのだ。

白色事業専従者控除や青色事業専従者給与を使う場合は、妻や家族を扶養することはできない。扶養控除や配偶者控除は受けられない

 

所得が少ないときの国税(所得税)は恐れるに足りない

パターン別のそれぞれの所得が分かったところで所得税を計算してみよう。

収入からいろいろな経費を引いたものが所得だ。所得に税率をすぐかけるわけではない。所得から更に

基礎控除 配偶者控除・・・ など様々な所得控除を引いて「課税所得」をもとめ、それに税率をかけて納める。

控除が所得を上回って課税所得が0以下ならば納税額は0円だ。

※今回は上の前提条件に記載のとおり、控除の合計を68万円として計算している。

 

所得税 パターンA(配偶者控除)

本人の所得税
所得100万円
控除合計68万円
配偶者控除 38万円

パターンAは配偶者は収入なしなので配偶者控除が使える。
この場合の控除額が合計106万円で所得を上回ってるので課税所得がマイナスになるから国税は0円だ。

妻の所得税
収入なしなのでもちろん0円。

所得税 パターンB(事業専従者控除)

本人の所得税
所得50万円(給料50万払っているので100万円-50万円)
控除合計68万円

課税所得はマイナスなので

所得税0円

妻の所得税
給与収入50万円(本人からもらった給料)
給与所得控除55万円

そもそも給与所得が0円以下なので

所得税0円

まとめとしては、国税(所得税)は今回の前提条件ではどのように計算しても納める税金は0円となった。

 

住民税に関しては「住民税非課税世帯」に該当するかどうかが肝だ

地方自治体によって計算方法に違いがあるので必ず自分の居住地のHPで調べる。
計算方法は基本的に国税と同じような考え方だ(控除額が微妙に違う)

今回は所得が少ない場合を想定しているので、調べる肝は住民税が非課税になるかどうかだ。「均等割」と「所得割」の両方が非課税となるのかをまず判断する。(住民税非課税世帯とは→均等割、所得割共にかからない世帯

※昨今では政府が住民税非課税世帯を条件に給付金を出したりと優遇されるケースも多い

さて、住民税非課税(「均等割」「所得割」とも非課)世帯となるためには具体的な所得はどうあればいいのかというと・・

例として東京都文京区のHPから抜粋。

「均等割と所得割のどちらも課税されない方」は下記に該当する人という記述がある。

  1. 1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている方
  2. 1月1日現在、障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額(注2)が135万円以下の方
  3. 前年中の合計所得金額が、次の金額以下の方
    扶養親族等のいない方…45万円
    扶養親族等のいる方…35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数(注4))+10万円+21万円

※東京都文京区HPより引用

1・2は今回の記事には関係ないので上記3にあてはめて考えてみる。

パターンAの場合は「扶養親族等のいる方」をみる。

( )内が自分と妻で2として計算できるので、住民税全額免除のハードルが低くなる。(35×2)+10+21 なので101万以下なら非課税だ。

本人の所得は100万円なのでぎりぎり非課税だ。

妻ももちろん収入0なのでセーフになる。

パターンBだと非課税のハードルが少し上がる。「扶養親族等のいない方」…に該当するので45万円以下じゃないと非課税にならない。(妻は所得がないので該当するが・・)

パターンBだと残念ながら妻は非課税だが、本人は「均等割と所得割のどちらも課税されない」というわけにはいかない。

この場合、妻だけが住民税非課税となるが、本人は無理なので住民税非課税世帯にはなれない。世帯の全員が住民税の「所得割」と「均等割」の両方非課税じゃなければ住民税非課税世帯ではないからだ。

結論 住民税非課税を考える場合にはパターンAが優秀。

 

年金(国民年金保険料)については免除額がどのくらいになるかを見積もるのが肝だ!

年金についてはどんなに収入が少なくても将来のために貯金などを崩しても払いたい人はいると思う。

今回は支払いが厳しくて免除してもらいたいという人向けの説明となる。

国民年金保険料は免除申請できる。ほっとくよりはよほどいいので苦しい人は必ず申請しよう。ただの未払いだと将来必ず後悔する。

ただし、免除の基準は数字ではっきりしているのでその基準以下じゃないと基本的に免除申請はとおらない。その基準は以下のとおりだ。

国民年金保険料の免除水準(日本年金機構)

全額免除を受けるために必要な条件はこのように記載されている。(該当しない場合は順次下位の4分の3以下の免除要件にあてはまるか調べていく)

年金が全額免除になるためには
★前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

※日本年金機構より抜粋

とある。

(扶養親族等の数+1)の部分は、パターンAで行く場合は妻を扶養することになるので扶養親族等の数が1となり、1+1で2。パターンBの場合は扶養では扱えないので0+1で1になる。

パターンAなら102万円までならば全額免除。パターンBなら67万までなら全額免除となる。

パターンA
本人の所得は100万円なので全額免除OK
妻 収入なしなので全額免除OK。

パターンB
本人の所得は50万円なので全額免除OK
妻 所得は0円なので全額免除OK

今回の例では二人とも年金は全額免除となあることが判明した(申請が必要)。ただし、もう少し所得が大きい場合だと、パターンAでは大丈夫だが、パターンB場合は全額免除が難しくなるケースがある事がお分かりいただけるだろう。

結論 年金の免除を考える場合にも住民税非課税の場合と同じくパターンAが優秀だった。

※年金は夫婦各々について審査するからそれぞれ個別に上記条件にあてはめて考える。たとえば妻が全額免除要件にあてはまっても、夫が要件を満たさなければ妻も全額免除とならない。(二人の所得を合計して審査するわけではなくそれぞれ審査して所得が大きい方につられると考える)

国民健康保険料はやや複雑だが所得を分けるパターンBの方が優れる

さて問題の国民健康保険料。これは均等割りと所得割の合計になるが、検討の肝は均等割りの軽減と、所得割の際の基礎控除だ。それぞれ説明する。

国民健康保険料の均等割りの軽減

国民健康保険料の均等割は、確定申告して所得が低ければ自動的に軽減になる。(さきほど検討した国民年金保険料の免除は申請が必要)

軽減の判断をするときには世帯全体の所得で考えるのでパターンA、Bどちらにしても結果は変わらない。それについては東京都目黒区のHPの均等割の軽減の注意事項に記載があった↓

事業主は専従者給与を必要経費として控除せずに判定します。また専従者が受け取る専従者給与は所得には含めずに判定します。(東京都目黒区HPより抜粋)

というわけで今回の場合は世帯の合計所得100万円で計算する事になる。

ちなみに去年(令和4年度)は東京都23区を例にとると均等割は一人71900円だった。二人で143800円だが、例えば下記で均等割5割軽減に該当すれば、世帯で払う国民健康保険料の均等割りは71900円となる。

 

それでは軽減の水準を見てみよう。

前年中の所得(注記1)が次の金額以下の世帯

43万円+(10万円×(給与所得者等(注記2)の数-1))⇒7割軽減

43万円+(10万円×(給与所得者等(注記2)の数-1))+(28.5万円×被保険者数(注記3))⇒5割軽減

43万円+(10万円×(給与所得者等(注記2)の数-1))+(52万円×被保険者数(注記3))⇒2割軽減

※目黒区HPより抜粋 より詳細はこちらで確認

給与所得者はパターンAで0、パターンBで一人となるが、どっちでもこのカッコ内は無視してOK。

この表に世帯所得100万円あてはめると、ぎりぎり5割軽減に該当するようだ

7割軽減を受けるためには二人の所得の合計が43万円以下となるので結構ハードルが高い。それでも当てはまる人はもちろんいるだろうが、そういう人は国税はもちろん0、年金も免除、住民税も非課税だろう。

国民健康保険料の所得割の計算

所得割を出すときには均等割りとは違ってそれぞれの所得で考える。

算定基礎額という数字に、規定のパーセンテージを乗じて計算。

算定基礎額は所得から基礎控除額(43万円)を差し引いた額

さてここでちょっとしたマジックが起こる。

パターンAなら本人が100ー43で57万円が算定基礎額になる。妻は収入なしだから0。

ところがパターンBなら本人が50-43で7万円が算定基礎額、妻は所得0だからもちろん0円だ。

本人の算定基礎額に50万円の算定基礎額の違いがある。

算定基礎額を求める上での基礎控除額が43万円と大きいので、所得を夫婦で分散するメリットが出た形だ!

これだけ違えば支払う国民健康保険料の所得割は5万以上の違いがでる。

お金が無いときの5万円はでかい。

パターンAが住民税非課税や年金免除で得られるメリットは所得が少ないほどパターンBと変わらないか、差が小さくなるから、国民健康保険料所得割の計算上のメリットが上回った場合はパターンBの採用をおすすめする。

まとめ&簡単手順

いろいろと書いてきた。

結論として、パターンAでは扶養している人がいる前提なので、住民税非課税の判定や年金の免除についての判定においては有利に働くことがわかった。

一方で国民健康保険料については、パターンBを採用した方が所得割計算でパターンAと比較すると大幅に保険料が下がることがわかった。

どちらにするかは簡単だ。

各項目を今回やったように一つ一つ自分の数字をあてはめて計算すればいい。

充分検証したらその内容で申告すればいいのだ。ちなみにパターンBで考える場合、白色事業専従者控除は確定申告をしてはじめて認められるものだから、課税所得がなくても申告は必要だ。

またパターンAの場合で課税所得がなければ確定申告は不要になるだろうが、住民税の申告は必要になるはずだ。

所得が本当に少ない場合は、パターンBの扶養なし戦略でも年金や住民税は免除になる公算が高いので、差が付くのは国民健康保険の所得割ぐらいになる場合が多いから、その場合はパターンBを使って申請すればいいと思う。

なお、私は税理士でもなければ会計士でもない。今回調べたことは各種HPや年金事務所や東京中の区役所などに複数電話して確認した事を記事にしている。

是非お近くの自治体の役所などで確認してほしい。その場合、担当の人でもあまり細かいところまでは理解していない人が結構いるので要注意だ。

 

 

 

 

 

 

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