2025年9月25日より、Y!mobileは新料金プラン「シンプル3」の提供を開始する。本稿では、現行プラン「シンプル2」との比較を通じて、この新プランがユーザーにとって真の「改善」となるのか、あるいは実質的な「値上げ」となるのかを多角的に分析する。
最初に結論を述べると、「シンプル3」はソフトバンク経済圏のサービス(PayPayカード、ソフトバンク光など)を利用するユーザーにとっては大幅な改善となる一方、それらの割引を適用できないユーザーにとっては基本料金が上昇するという、明確な二面性を持つプランである。
基本料金は値上げ、割引適用が鍵
まず認識すべきは、割引を一切適用しない場合の基本料金そのものは、全プランで引き上げられている点だ。
- シンプル3 S (5GB): 3,058円 (旧2,365円)
- シンプル3 M (30GB): 4,158円 (旧3,615円)
- シンプル3 L (35GB): 5,258円 (旧4,715円)
しかし、「シンプル3」の真価は、強化された各種割引を適用した後の実質料金にある。
【新旧プラン比較表】あなたの支払い額はいくらになるか
ユーザーの利用状況に応じて想定される代表的な割引パターン別に、新旧プランの料金を比較する。
プラン | データ容量 | 基本料金 (税込) | パターンA: 最大割引後 (ゴールド+光) |
パターンB: 通常カード+光 | パターンC: 通常カード+でんき |
---|---|---|---|---|---|
シンプル3 S | 5GB | 3,058円 | 858円 | 1,078円 | 対象外 |
シンプル2 S | 4GB | 2,365円 | ― | 1,078円 | 2,068円 |
シンプル3 M | 30GB | 4,158円 | 1,958円 | 2,178円 | 2,728円 (~24ヶ月) |
シンプル2 M | 20GB | 4,015円 | ― | 2,178円 | 3,718円 |
シンプル3 L | 35GB | 5,258円 | 3,058円 | 3,278円 | 3,828円 (~24ヶ月) |
シンプル2 L | 30GB | 5,115円 | ― | 3,278円 | 4,818円 |
※なお、「シンプル3」では家族割も引き続き利用可能。「家族割引サービス」を適用すると、2回線目から月額料金が月額1,100円割引になる。(他の大きめな割引とは併用できない)
割引サービスの詳細
- 「PayPayカード割」 通常−330円/月、ゴールド −550円/月(シンプル2は一律187円の割引)
- 「おうち割 光セット(A)」 S/M/Lすべて −1,650円/月に統一(シンプル2は一律1100円の割引)
- 「おうち割 でんきセット(E)」 M/Lのみ −1,100円/月(最大24カ月)(光セットとの併用不可/Sは対象外、シンプル2は一律110円の割引)
ゴールドの割引は通常カードより+220円/月多い。年会費11,000円を割引差だけで回収=約50カ月(実際はポイント還元や付帯特典も加味)
料金”以外”の強化点を一目で
特典・機能 | シンプル3 S | シンプル3 M | シンプル3 L |
---|---|---|---|
データくりこし(翌月まで) | ✓ | ✓ | ✓ |
海外データ通信 2GB/月 追加料金不要 | ✓ | ✓ | ✓ |
国内通話10分無料 + グループ通話/割込通話 | — | — | ✓ |
LYPプレミアム 追加料金なし | ✓ | ✓ | ✓ |
PayPay決済特典によるデータプレゼント | ✓ | ✓ | ✓ |
【注目】海外データ通信が革新的に進化
「シンプル3」の最大の目玉の一つが、海外200以上の国・地域でデータ通信をする際、各料金プランのデータ容量とは別に1カ月当たり2GBのデータ容量を追加料金なしで利用できることだ。
海外データ通信の詳細
- 対象エリア: 海外200以上の国・地域
- 利用可能量: 月間2GB(全プラン共通、国内データ容量とは別枠)
- 対象通信: 海外でのメール(S!メール(MMS)、Eメール)やウェブ閲覧、テザリングなど全てのデータ通信が対象
- 対象外: 音声通話やTVコール、海外でご利用のSMSおよび国際SMSは対象外
- 追加料金: 完全無料
- 開始時期: 2026年夏以降を予定
2026年夏まではどうなる?
「シンプル3」の提供開始日からこのサービスの開始日までの期間は、「海外あんしん定額」の「定額国L」で提供している24時間プラン(3GB、980円(非課税))を1カ月当たり最大7日分、追加料金なしでご利用可能。つまり、月最大21GBの海外データが無料で使えることになる(他、条件あり)
これまで海外でのデータ利用には1日あたり980円の費用がかかっていたが、「シンプル3」では月7日分(約6,860円相当)が無料になり、2026年夏以降は完全無制限で月2GBが使い放題となる。年に数回の海外旅行や出張がある方なら、この特典だけでかなりの節約効果が期待できる。
PayPay利用者向けキャンペーン「PayPay使ってギガ増量」
2025年11月以降に開始する予定です(終了時期未定)の「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」は、PayPayの利用頻度に応じて大幅なデータ増量が受けられる画期的な特典だ。
PayPay決済特典の詳細
- 対象決済: 「PayPayクレジット」「PayPay残高」「PayPayポイント」の決済
- 条件: 1回当たり200円以上の決済
- プレゼント内容:
月間決済回数 | シンプル3 S | シンプル3 M/L |
---|---|---|
10~19回 | 1GB | 1GB |
20~29回 | 0GB | 5GB |
30回以上 | 0GB | 10GB |
- 対象期間: 毎月1日から月末までを対象とし、データ容量のプレゼントは翌月上旬以降を予定
- 有効期限: 付与されたデータは付与された月末まで利用でき、翌月にくりこしされません
- 対象外: 「シンプル3」や、”ソフトバンク””ワイモバイル””LINEMO”の各プランの月額料金の支払いなど、一部対象外となる決済があります※シンプル3Sはいくら使っても増量分は合計1GBが上限
PayPay特典の活用例
例えば、シンプル3 Mユーザーが月30回PayPayで支払いをした場合、基本の30GBに加えて10GBが無料追加され、実質40GBで利用できる。コンビニ、飲食店、ネットショッピングなど日常的にPayPayを使うユーザーなら、実質的にワンランク上のデータ容量が手に入る計算だ。
生活スタイル別のおすすめパターン
利用スタイル | おすすめプラン/ポイント |
---|---|
海外旅行・出張が多い | どのプランでも海外2GB無料が付帯 → プラン変更メリット大 |
通話が多い | シンプル3 L(10分以内通話無料) → 通話派には実質的な値下げ |
PayPayをよく使う | キャンペーンでデータ追加 → 通信量が増えてお得 |
割引を一切適用できない | 基本料金が上昇 → プラン変更は非推奨 |
おうち割でんきセットは24ヶ月限定の新サービス
自宅の事情で光回線を引けない場合でも、M/Lプランなら「おうち割 でんきセット(E)」が利用可能だ。
おうち割でんきセットの詳細
- 対象プラン: シンプル3 M/L(Sは対象外)
- 割引額: 毎月1,000円(税込み1,100円)
- 割引期間: 最大24カ月
- 対象サービス: おうちでんき(A)(N)(T)、おうちでんき Powered by 関西電力
- 併用不可: 「家族割引サービス」「おうち割 光セット(A)」との重複時は割引額の大きい方を適用
電力会社の変更は、ほとんどの場合メーター切り替えや工事などが不要で簡単。ソフトバンクでんきは「電力市場連動額」を廃止しており、旧一般電気事業者の自由料金プランとほぼ同じ料金設定となっている。24ヶ月間で総額26,400円の割引は、光回線が引けないユーザーには強力な選択肢だ。
結論:どのようなユーザーがプラン変更を検討すべきか
「シンプル3」へのプラン変更を推奨できるかどうかは、契約状況によって明確に分かれる。
【プラン変更を強く推奨】
- PayPayカード ゴールドと「おうち割 光セット」を適用できるユーザー → 全プランでデータが増え、料金も下がる。間違いなくメリットが大きい。
【プラン変更を検討の価値あり】
- PayPayカード(通常)と、「おうち割 光セット」を適用できるユーザー → 月額料金は旧プランと同額のまま、データ容量が大幅増加(S:+1GB, M:+10GB, L:+5GB)。価格据え置きでサービスが向上するため、プラン変更を検討する価値は十分にある。
- MまたはLプラン契約者で、「おうち割 でんきセット」を新たに適用できるユーザー → 24ヶ月間で総額26,400円の割引は大きい。光回線が引けない場合の有力な選択肢。
- 海外旅行・出張が多いユーザー → 海外データ2GB無料(暫定的に月7日分の無料利用)の価値が高い。
【プラン変更は慎重に判断すべき】
- PayPayカード割のみ、もしくはおうち割のみが適用されるユーザー → 割引額と基本料金の値上げ幅を比較検討が必要。
- 割引を一切適用できないユーザー → 純粋な値上げとなるため、プラン変更は非推奨。
これからY!mobileを契約するなら、少なくとも「PayPayカード(ゴールド含む)とソフトバンク光」、または「PayPayカードとソフトバンクでんき」、このどちらかは必須と考えてよいだろう。
その他注意すべきポイント
- SIMのみ新規契約の場合: 契約月から4カ月間は海外でのデータ通信が利用できない
- でんきセットは24ヶ月限定: 割引期間終了後の料金上昇を見込んだ計画が必要
- PayPayカード ゴールドの年会費: 割引差額だけでは約4年で回収のため、ポイント還元等も含めた総合判断が重要
他社との比較で見る「シンプル3」の位置づけ
「シンプル3」の最大割引適用時の料金は、格安SIM市場でも相当な競争力を持つ。
一方で、割引なしの基本料金は決して安くない(はっきりいって高い)ソフトバンク経済圏を使わないユーザーには、他の格安SIMの方が魅力的である。つまり「シンプル3」は、ソフトバンクとPayPayの連携サービスを積極的に使うユーザー向けの「プレミアム格安SIM」と位置づけられる。
まとめ:「シンプル3」で変わる携帯電話の選び方
「シンプル3」は単なる料金プランではなく、ライフスタイル全体の最適化を促すサービス設計になっている。PayPayでの支払い、ソフトバンクの固定回線や電力、海外でのデータ利用など、生活のあらゆる場面でソフトバンクのサービスを使うほどメリットが大きくなる仕組みだ(今後はYモバイルだけではなく他キャリア含めすべてこのような流れになるだろう)
これは、従来の「とにかく安い携帯電話を」という選び方から、「経済圏全体での最適化」という考え方への転換を意味する。自分のライフスタイルがソフトバンク経済圏と親和性が高いかどうかを見極めることが、「シンプル3」を選ぶかどうかの最も重要な判断基準となる。
2025年9月25日から始まる「シンプル3」は、従来の単純な料金競争から一歩進んだ、経済圏全体を活用したプランと言える。ユーザーにとっては選択肢が増える一方、より戦略的な判断が求められる時代の到来でもある。
(本記事は2025年9月5日時点での公式情報を基に作成したものである)
コメント